味のある活版の魅力、後世へ 長崎・小値賀島の印刷所4代目、福岡で修行 – 西日本新聞



 鉛製の活字、手作業の温かみ…。デジタル化の進展など時代の波に押され、消えつつある活版印刷を100年後も残したい-。長崎県の離島、小値賀島唯一の印刷所で、こんな夢を抱く29歳の女性がいる。「晋弘舎活版印刷所」(小値賀町)4代目の横山桃子さん。この夏、福岡市の老舗印刷所で修業し、「活版がこれからもお客さんに必要とされる可能性を感じた」と手応えを語る。

 デザイナーを志して県外の大学に進んだ横山さんが家業を継ごうと思ったのは20歳のころ。授業で「活版は消えつつある技術」と聞いたのがきっかけだった。

 帰省の際、父弘蔵さん(65)の仕事や印刷物を見直した。字の濃淡、紙の手触りで分かる凹凸、インキのにおい…。手作業の良さを感じた。活字の組み方や紙とインキの選択、刷る時の圧力で「一枚一枚表情が変わるのも魅力」だった。

 「印刷所を継ぎたい」と宣言した娘に父は「未来のある商売じゃない」と反対した。インターネットで島外からも発注を募る計画を示して説得し、2012年、印刷所で働き始めた。

 渡船の切符など町内の依頼を受ける父とは別に、全国から名刺や封筒などの注文を受けた。デザイン性の高さなどで好評だったが、一枚一枚刷る手作業に時間がかかり、発送まで3カ月待たせることもあった。

 「今のやり方じゃ続かない」と今年2月、新規の受注をストップ。活版印刷へのこだわりで有名な印刷所「文林堂」(福岡市城南区)の山田善之さん(75)の下での修業を決断した。

 5月下旬から8月初めまで、山田さんの仕事に密着した。活版の印刷機や裁断機の扱いといった技術だけでなく、客への姿勢も学んだ。「わざと文字をかすらせて活版らしさを強調するなど、注文以上の工夫を加えていた」

 帰島後は業務再開へ向けて準備を進めている。一部の工程を自動化できる印刷機を導入し、作業を効率化するめども立った。もちろん、活字を一つ一つ探して組み合わせる「組み版」など手作業の良さも残すつもりだ。

 「活版の手作業と、島のゆったりしたリズムは似ている。山田さんに学んだことを生かしつつ、小値賀だからこそできる活版印刷を生み出したい」

 柔和な表情を引き締めて、言い切った。

=2017/08/21付 西日本新聞夕刊=




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