「働き方」促す存在 働けど実習生(5) – 西日本新聞



 拍子木の音が夜の街に響いた。23日、北九州市若松区。インドネシア人の技能実習生4人が住民と一緒にパトロールに繰り出した。「外国人も地域の一員。日本人と同じように生活させたい」。実習先の鋼材加工会社、松木産業の松木友哉社長(42)の方針だ。それは働き方にも反映される。

 1日8時間勤務。残業が可能な「三六協定」を労使で結ぶ職場なので1、2時間延びる日もあるが、割増賃金が支払われる。条件は日本人社員と変わらない。

 かつて労務管理が不十分な職場では長時間勤務や残業代の不払いが横行した。国際的な批判もあり、国は監視を強化。実習生のいる企業に労働基準監督署が入って違反を見つける率は、2015年が71%で4年間に10ポイント下がり、全体の違反率(69%)とほぼ並んだ。

 松木社長は「帰国しても思い出してもらえる会社でありたい」と誓う。

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 実習生の働き方と真剣に向き合う経営者は、長崎県南島原市にもいる。養豚会社、芳寿(ほうじゅ)牧場の平芳紘社長(74)は昨年夏、ベトナムから3人を受け入れて初めて、安全や衛生、起床・就寝のルールを定めた寄宿舎規則を作った。社員寮を設ける場合、労働基準法で届出が義務付けられている。

 法人化して33年たつものの、長く家族経営を続けてきただけに、労働法制には疎い面もあった。平さんに限らず、農業全体の課題でもある。実習生が来てからは、監理団体の定期監査が入るようになり、意識がより高まったという。

 豚舎では千頭を飼育しており、日本人の従業員も雇用している。「実習生はきつい餌やりやふんの掃除も真面目にやるので、職場全体がぴりっとしてきた」。思わぬ効果に頬が緩む。最近は実習生に漢字を教え、きれいな字には赤ペンで花丸を書くのが日課という。

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 「実習生の待遇が悪いのは、そもそも経営意識が低く、日本人にとってもブラック企業。ただし…」。福岡県内の監理団体の幹部は「賃金だけは、どこも上げられない」と明かす。

 受け入れ企業には「最低賃金で横並び」とする暗黙の了解があるという。1社が賃上げすると実習生に不満がたまり、かといって増額の求めに応えれば「安い労働力」を確保できるメリットが薄れてしまう。

 確かに最低賃金でも、途上国の出身者にとっては十分な収入といえる。一方、経済格差が縮まった国の実習生には、日本へ行く意味が薄れる。この監理団体も数年前、人材の供給源を中国からベトナムに切り替えた。ベトナムの経済成長が進めば、また別の国へ…。

 幹部はつぶやく。「定期的に受け入れ国を切り替えるのが実習制度の宿命。いつかは限界が来てしまう」

=2017/02/26付 西日本新聞朝刊=

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